| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-35 (Oral presentation)

地中海原産のムラサキイガイMytilus galloprovincialisの遺伝子は日本沿岸にどの程度侵入しているのか?

上村了美(大阪市立大学)

地中海原産のムラサキイガイは、世界各地の移入先において在来種のキタノムラサキイガイと交雑することが知られている。キタノムラサキイガイは日本では主に北海道に生息しているとされ、同地ではムラサキイガイ、キタノムラサキイガイ、両種のハイブリッドが同所的に生息している。本研究では、ムラサキイガイの定着によってどのような遺伝子撹乱が起こっているのかを明らかにすることを目的とし、日本各地で採集した個体について、足糸タンパク、ITS領域およびマイクロサテライトの各遺伝子マーカーを用いて解析した。今回の調査地(苫小牧、函館、塩釜、釜石、秋田、四倉、波崎、舞鶴、東京湾)では、苫小牧でハイブリッドが多く出現し、同地で採集した個体(n=32)の約30%が足糸タンパクもしくはITSによりハイブリッドと判定された。また、足糸タンパクとITSでハイブリットか否か異なる結果となった個体が約10%出現した。マイクロサテライトマーカー解析では、ムラサキイガイではみられないアリルを有する個体がみられた。キタノムラサキイガイの生息が確認されていない地域においても、個体数は少ないものの、遺伝的にハイブリッドの特徴を持つ個体が確認された。このようにムラサキイガイによる遺伝子撹乱は、遺伝子領域ごとに変則的であること、また、ハイブリッドは片親のキタノムラサキイガイの生息地以外にも分散していることが明らかとなった。さらに、ハイブリッドが既往文献より低い割合で出現たことから、ハイブリッドの出現は経年変動すると考えられた。

本研究を遂行するにあたり、科研費の助成(課題番号24760439)および大阪市立大学女性研究者支援員制度によるサポートをいただきました。ここに記して感謝いたします。


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