| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-35 (Oral presentation)

絶滅リスクに基づいた新たな生物多様性フットプリント:木材貿易が絶滅危惧鳥類に与える影響

*西嶋翔太 (横浜国大), 古川拓哉 (森林総研), 角谷 拓, 石濱史子 (国環研), T. Kastner (Univ. Klagenfurt), 松田裕之, 金子信博 (横浜国大)

様々な資源の国際貿易は輸出国の生物多様性を劣化させる恐れがある。しかし、国際貿易に関する既存の生物多様性フットプリント (BFprev) は定性的かつ空間非明示的な手法に基づいており、不正確な評価であった可能性がある。そこで本研究では、絶滅リスクに基づいた新たな生物多様性フットプリント (BFex) を開発し、この指標を用いて木材貿易の影響を評価した。

IUCNのレッドリストで木材収穫の影響を受けているとされる500種以上の鳥類を対象に、まず種の分布マップと森林消失マップの重ね合わせから算出した生息地の減少率と個体数から種の絶滅確率を推定した。次に、期待される将来的な絶滅種数をBFexとして計算し、木材貿易データから生産国と消費国の関係を明らかにした。

同じデータからBFprevも算出し、BFexと比較したところ、BFprevでは海外から受ける影響はインドネシアが他国に比べて圧倒的に大きかったのに対し、BFexではブラジルがインドネシアに匹敵するほどの輸出国であることが分かった。さらに、BFexを用いて現状の貿易関係が継続するシナリオと各国が木材を自給するシナリオの比較したところ、自給シナリオのBFexの総和は、現状貿易シナリオをやや上回るという意外な結果が得られた。これは、中国と日本という主要な輸入国とメキシコやフィリピンなどの熱帯諸国では、木材を自給した場合に絶滅リスクが大きく増加するからである。

本研究で新たに開発したBFexは、木材の消費と貿易によって鳥類種が絶滅してしまうほどの影響を受けている国を特定し、世界規模で生物多様性を保全するための効果的な貿易パターンを探るのに有用であると考えられる。


日本生態学会