| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-32 (Oral presentation)

ケヤキの害虫、ヤノナミガタチビタマムシの生活史と各ステージの生存率

大澤正嗣 山梨県森林総合研究所

ヤノナミガタチビタマムシ (Trachys yanoi (Y. Kurosawa)) は、タマムシ科に属する甲虫で、幼虫、成虫ともケヤキの葉を食害するため、害虫として扱われている。幼虫は、いわゆる絵描き虫(潜葉性害虫)で、葉を内部から食害する。食害を受けたケヤキ葉は、早期に落葉する。成虫はケヤキの葉を外部から主要な葉脈を残し食害する。幼虫の食害が引き起こす早期落葉とその後の成虫による食害で、ケヤキは多くの葉を失い、被害が激しい場合は晩夏には丸坊主となってしまう。この為、本害虫の生態を明らかにし、それを基に被害を軽減するための研究を行っている。本害虫は成虫越冬し、春に活動を開始、ケヤキの葉を食害する。5月に産卵、幼虫は葉内部に潜り、葉肉を内部で食害する。7月に被害を受けたケヤキ葉は早期落葉し、その落葉内部で、幼虫は蛹化、羽化し、脱出した成虫は再びケヤキ樹冠へと飛翔し、ケヤキ葉を食害する。野外観察と室内飼育試験により、本害虫の各発育段階の時期、期間、生存率を明らかにした。早期落葉した葉の除去が被害軽減の方法の1つとなるが、早期落葉期間及び落葉から成虫脱出までの期間が短く、早期落葉除去を適切な時期に適切な回数行うことが、被害軽減効果を上げるために重要であることが明らかとなった。


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