| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-35 (Oral presentation)

表現型可塑性と適応度コスト:生活史戦略の異なる同属寄生蜂の比較モデル解析

*嶋田正和, 長瀬泰子 (東大・総合文化・広域)

寄生蜂Anisopteromalus quinarius(2n=10)は、近縁のA. calandrae(ゾウムシコガネコバチ、2n=14)の同胞種として扱われ、2014年に正式記載された。両種は形態が極めて似ている。A. quinariusの体サイズは2~3倍大きいが、無給餌区では寄生能力が低く、1週間ほどで死に絶える。また、宿主アズキゾウムシとヨツモンマメゾウの匂いによる選択産卵学習はできない(Sasakawa et al., 2013)。一方、A. calandraeは成虫期に長生きし、次世代生産も250匹ほども残し、24時間~48時間の条件づけで匂いによる明瞭な選択産卵学習を示す。そのために、宿主2種とA. calandareの3者系で逆位相振動を発生して永続性を示す(Ishii and Shimada, 2012, PNAS)。

今回は、生活史パラメータとして日毎の繁殖力と生存率を無給餌区とハチミツ給餌区とで測定した。A. calandraeは無給餌下でも宿主を吸汁することで成虫寿命は3週間、次世代生産も250匹を越えるが、ハチミツを与えても生活史はさほど変わらない。一方、A. quinariusは無給餌下では40匹ほど次世代を産して1週間で死ぬが、ハチミツ給餌区では成虫寿命は6週間を越え、次世代生産も最大185匹(平均101匹)に達し、大きな表現型可塑性が見られた。

これらをLeslie推移行列に組み、表現型可塑性を考慮した各要素の固有値に対するsensitivity(絶対寄与)とelasticity(相対寄与) を求め、両種の寄生蜂を比較して、どの要素に大きな適応度効果があるかを解析した。また、A. quinariusの大きな表現型可塑性は、固有値感度の上でどのような適応度コストを示すか、trade-offを解析する。


日本生態学会