| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-20 (Oral presentation)

狩蜂の獲物サイズ選好性:巣穴サイズによる制限の可能性

*篠原忠,高見泰興(神戸大・人間発達環境)

肉食動物の多くはどんな獲物でも捕食するわけでなく,獲物に対する選好性があり,それによって利用する獲物は限られる.狩蜂の場合,狩場の選好,獲物の分類群の選好,獲物サイズの選好などにより獲物が制限されると考えられている.獲物サイズは狩蜂の体サイズと正の相関があることが知られており,狩蜂は物理的に運搬可能な獲物を狩っていると考えられる.しかし,狩蜂は獲物を巣内に運び込み幼虫の餌にするため,獲物サイズを制限する要因は狩蜂自身のサイズだけでなく,巣穴サイズにも影響される可能性がある.運搬可能であっても巣穴に入らない獲物は利用できず,運び込むには巣穴を拡張する必要があるが,それは狩蜂にとってコストになるはずである.そのため,巣穴サイズが獲物サイズの制限要因になるときには,狩蜂は巣穴サイズよりも小さい獲物を狩ると予測される.

アカアシツチスガリCerceris albofasciataはカメノコハムシ亜科を専門に狩る狩蜂である.カメノコハムシ亜科には,成虫の体に棘や扁平縁(体の周囲に張り出した縁)といった外部形態を持つものが含まれ,その発達程度によりさまざまなサイズの種が存在する.巣穴サイズ制限仮説を検証するために,アカアシツチスガリの営巣地周辺のハムシ相と実際に狩られているハムシを調査した.調査はツチスガリが狩りを行う7-8月にかけて行った.その結果,調査地周辺にはカメノコハムシ亜科4属7種が生息しており,このうちツチスガリが狩っていたのは4属6種であった.得られたハムシの最大幅とツチスガリの巣穴入口の直径を測定したところ,狩られた種はすべて巣穴サイズより有意に小さく,狩られなかった種は有意に大きいことが示された.この結果は当初の予測と一致し,獲物サイズは巣穴サイズにも制限されるという新たな可能性を示唆するものである.


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