| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-014 (Poster presentation)

三宅島2000年噴火後の植生被害・回復傾度と陸生大型ミミズ個体数の関係

*井本朱香(筑波大・生物資源),門倉由季(筑波大・生命環境),南谷幸雄(横浜国大・環境情報),金子信博(横浜国大・環境情報),上條隆志(筑波大・生命環境)

陸生大型ミミズ(以下ミミズ)は植生に応じて個体数、種が変化することがわかっているが、火山灰堆積地や炭鉱跡地といった裸地からの植生発達とミミズ個体数、種の関係を調べた研究は少ない(Pizl 2001 ; Aplet 1990)。本調査地である三宅島は2000年に雄山が噴火し、大量の火山ガスと火山灰による噴火被害程度によって、発達段階の異なる植生がモザイク状に広がっている(高橋 2011)。本研究では、火山灰堆積や植生発達がミミズ個体数、種組成に与える影響を明らかにする。2014年7~11月に三宅島全域17地点においてミミズの個体数測定、種同定を行った。

17地点中13地点において2科9種のミミズが採集された。GLMM解析の結果から火山灰が深いほどミミズ個体数は少なく、合計植被率が高いほど多くなることがわかった。また、ミミズ個体数はスダジイ林に多く、タブノキ・オオバヤシャブシ林はスダジイ林より少ないが確認された。ハチジョウススキ・ヒサカキ低木林ではミミズはほとんど確認されなかった。ミミズの種組成は、スダジイ林のみで5種、スダジイ林とタブノキ・オオバヤシャブシ林で3種、タブノキ・オオバヤシャブシ林のみで1種確認された。

ミミズ個体数、種ともに植生が発達している地点ほど多くなり、植生発達とミミズ個体数・種数の増加が対応していることが示された。また、火山灰の堆積がなくハチジョウススキ・ヒサカキ低木林の地点ではミミズは出現しておらず、火山灰と比べ植生の影響の方が強く働いている可能性がある。植生が未発達なタブノキ・オオバヤシャブシ林に偏って出現した種が確認されたことから、これらの種は火山灰遷移における先駆的な性質を持つ種である可能性がある。


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