| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-016 (Poster presentation)

水草刈り取りに対する沈水植物群落の応答

*丸野慎也 滋賀県立大学 院 環境, 築山省吾 滋賀県土木交通部, 浜端悦治 滋賀県立大学

沈水植物群落は水質を改善することが知られている。沈水植物は植物プランクトンと栄養塩をめぐり競争し(Wetzel, 2001)、動物プランクトンに魚類の捕食回避するための物理的なシェルターを提供している(Timm& Moss, 1984)。従って、沈水植物は生物相互作用によって水質を改善する(Shchriver et al, 1995)。

一方、沈水植物の過剰繁茂は問題を起こす。1994年の大規模な渇水を契機に、琵琶湖南湖で沈水植物が非常に繁茂し水質を改善したが、船の航行障害問題と沈水植物の腐敗による悪臭問題も引き起こした。

そこで滋賀県は沈水植物を刈り取り、現存量を管理する事業を2011年から本格的に開始した。しかし、沈水植物群落は水質改善に必要不可欠な存在であるため、沈水植物の現存量を管理する上で沈水植物の生育状況を十分に把握することが重要である。

我々は2010年、2012年、2013年に魚群探知機を用いて沈水植物群落量の調査を行った。また、芳賀ら(2006)の刈り取りによる現存量測定値を用いて現存量の推定を行い、GISによる現存量分布図を作成し、南湖全体の総現存量の推定を行った。次に、調査記録から水深に占める沈水植物の高さの割合(PVI)求めた。現存量と同様に、PVI分布図を作成し、PVIの加重平均値を求めた。

現存量推定値は2010年:11,850t、2012年:4,236t、2013年:4,281tとなり、PVIの加重平均値は2010年:32.8%、2012年:17.1%、2013年:25.7%となった。

2012年に現存量が大きく減少したが、2013年に現存量は回復した。各年の水質を比較すると、2012年はChl-aの値が比較的高かった。従って、Chl-aの値が高い時に刈り取りを行うと沈水植物群落の現存量は大きく減少すると考えられた。


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