| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-025 (Poster presentation)

カシノナガキクイムシとナラ枯れについて

*前川優衣(兵庫県立大学環境人間学部),中桐斉之(兵庫県立大学環境人間学部)

カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の穿入を受けたブナ科樹木が枯死する被害、ナラ枯れが1980年代以降急速に拡大している。カシナガは繁殖を行うために、ブナ科樹木に穿入し集合フェロモンを発生する。周辺のカシナガ成虫は集合フェロモンにひきつけられ、その樹木に集中して穿入する集中攻撃(マスアタック)を行う。これによって枯死が起こり、ナラ枯れが引き起こされる。本研究ではこのナラ枯れについて、格子確率モデルを用いて解析を行った。その際、集合フェロモンの重要性を調べるために、集合フェロモンがある場合とない場合の、2つのシミュレーションモデルを作成し、検証した。モデルは100×100の格子に3×3の樹木100本と、カシナガをランダムに配置し、時間とともに移動を行い、移動先が樹木だった場合穿入が起こる。もう一つの、集合フェロモンを考慮した場合のモデルは、ある一カ所が穿入を受けた時点で、穿入箇所を中心として上下左右5マスの範囲に含まれる又は移動してその範囲に足を踏み込んだカシナガ成虫は中心に近寄るようにすることで集合フェロモンを再現した。コンピューターシミュレーションによって実験を行った結果、フェロモンなしの時は個体数が少ないときそれほど枯死せず、フェロモンありの時は個体数が少なくても多くの樹木が枯死した。集合フェロモンなしの時は、マスアタックが起こらず、すべての木がまんべんなく枯死した。集合フェロモンありの時は、一本の樹木に集る成虫が多くなり、マスアタックが起こった。しかし、枯死した樹木の周りに生き残った樹木が存在していた。以上より、ブナ科樹木は集合フェロモンによるマスアタックによって枯死しやすくなり、枯れた樹木の周辺に生き残った樹木があるのはマスアタックが強く影響していることがわかった。


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