| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-026 (Poster presentation)

林床植物3種における機能形質の地理的変異

*藤本和樹(山形大・理工)・富松裕(山形大・理)

温暖化に対する植物種の応答の一つとして分布域の変化が考えられるが、分散能力の低い林床植物では、形質の可塑的または進化的な応答が種の存続において重要となるだろう。そのため、緯度勾配に沿った植物の形質変異を明らかにすることは、温暖化に対する植物の応答機構を解明する手掛かりとなりうる。葉の機能形質を用いた先行研究では、植物群集の機能形質が緯度や標高によって異なることが示されているが、緯度勾配に沿った草本植物の種内変異を多くの集団を用いて調べた研究は少ない。本研究では、東北および北海道に生育する林床植物3種を対象とし、緯度勾配に沿った機能形質の地理的変異を明らかにすることを目的とした。コンロンソウ9集団、オオバナノエンレイソウ10集団、ニリンソウ7集団で20個体ずつを選び、SLA(葉の単位重量あたりの面積)、LDMC(葉の乾物率)、PSL(葉の物理的強度)を測定した。これらの形質の種間および種内変異を分析するとともに、集団の緯度や生育期間(4~7月)の平均気温との間に見られる関係を分析した。その結果、3種の間には明瞭な形質の差異が認められたが、SLAとPSLでは形質の全変異のうち種間変異が占める割合は比較的小さく、種内集団間の変異の方が大きかった。また、3種の全ての形質において、形質値は集団間で有意に異なった。LDMCやPSLは集団の緯度や生育期間の平均気温との間に相関を示さなかったが、コンロンソウでは高緯度の集団ほどSLAが小さく、オオバナノエンレイソウでは平均気温の高い集団ほどSLAが大きくなる傾向がみられた。SLAで観察された種内変異の傾向は群集レベルの先行研究で知られているパターンと一致した。今後は、さらに集団数を増やして分析を行うとともに、形質の集団間変異が局所適応を反映している可能性について検討したい。


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