| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-029 (Poster presentation)

中山間地域の水田生態系における植物種多様性の保全に必要な空間スケールの検討

*渡辺太一(信州大院・総合工),大窪久美子(信州大・学術院・農)

水田生態系では、水田や畦畔、林地など種組成の異なる環境要素が複数存在することで、豊かな植物多様性が成立してきた。しかし近年、社会構造や農業事情の変化により農地の放棄や転用が進む中山間地域では、どの環境要素をどのくらの面積で保全管理を行えば効率的な植物種多様性の維持が可能かを明らかにすることが求められる。そのためには、水田生態系の植物種多様性を広域的スケールから局所的スケールまで分解して比較できる調査設計に基づいたアプローチが必要であるが、そのような既往研究はほとんどない。

そこで本研究では、中山間地域の水田生態系として長野県上伊那地方を事例地に、立地環境の異なる複数の地区、各地区内を構成する複数の環境要素、各環境要素内のパッチ(局所的群落)、これら3つの階層空間に分けた植物種多様性の相互比較を通して、保全上重要な空間スケールを明らかにすることを目的とした。

調査は、地形や土地利用および圃場整備状況の違いに基づいて選定した12地区で行った。調査の空間スケール設計については、各地区は集落周囲の土地利用を反映するよう500m直径円(面積約20ha)で設定した。地区内を構成する環境要素は、構造と植生管理手法の違いに基づいて11タイプに分類した。局所群落は、各地区に設定した25m仮想メッシュの交点における1㎡コドラートとした。各スケールにおける植物調査については、2012年から2014年の夏期に、地区および環境要素では植物相調査を、パッチでは水田、休耕地、畦畔、法面、道路の5つの環境要素を対象に植生調査を行った。

上記の調査結果については、Additive Partitioning(Lande 1996)を用いて地域全体の多様性に寄与する空間スケールを評価するともに、種数面積による実際的な保全スケールの考察を行う予定である。


日本生態学会