| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-046 (Poster presentation)

北海道阿寒湖における球状マリモの大量打ち上げ現象を挟んだ集団構造の変化

*熊谷七美,大原雅(北大・院・環境科学),若菜勇(釧路市教委・マリモ研)

マリモ(Aegagropila linnaei)は北半球の高緯度地方に広く分布する淡水緑藻の一種で、糸状の藻体が集まって球状の集合体を形成することで知られる。球状マリモが群生する阿寒湖北部のチュウルイ湾では、5~7年周期で比較的大きいマリモが強い南風によって湖岸に大量に打ち上げられる現象が過去半世紀以上にわたって繰り返されており、直近では2013年11月に発生が確認された。本研究では、大量打ち上げの発生によってマリモ集団の構造がどのように変化したのかを明らかにすべく、2013年6月と2014年6月にマリモを含む沈水植物の分布と生育状況を調査し、比較を行った。

調査では、同湾のマリモ集団の主要分布域を縦断するように20m間隔で3本の調査線を設置し、スキューバ潜水によるベルトトランセクト調査を行って、沈水植物の種類と被度を記録すると共に、各基線上の離岸距離60mと80mの合計6地点で円筒型採取枠を用いてマリモを定量的に採取し、得られた集合体の形状(球状集合・断片)と長径を測定した。

トランセクト調査の結果、2013年には距離45~80mに長径15cmを超す大型の球状マリモが最大4層に重なって分布していたが、2014年には45m付近ではほぼ全てのマリモが消失し、60~80mでは大型マリモの数が減少して層数も1~2層に減っていた。また、採集されたマリモ断片数を比較すると、2013年には60m地点で平均18個であったものが、2014年には平均343個に増加しており、大半は球状マリモが破損して生じた断片であった。

以上の結果から、比較的流動が激しい湖岸の近くでは、ほとんどのマリモが風波によって一掃されるのに対して、水深が大きくなると直径の大きなマリモが選択的に流動すること、また打ち上げられる過程で壊れて断片化していることが確認された。


日本生態学会