| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-075 (Poster presentation)

都市環境下で生育する街路樹の光合成応答-大気汚染物質・土壌環境による影響ー

*清水啓史,半場祐子(京都工繊大・応生)

街路樹は景観の向上、CO2吸収効果や蒸散による冷却効果などが期待されている。しかし、街路樹は大気汚染物質や乾燥、高温など多くの非生物的ストレスにさらされ、葉のしおれ、脱色、落葉などの可視障害や光合成阻害、蒸散低下などの生理機能障害を引き起こし街路樹本来の能力を発揮できていない可能性がある事が知られている。大気中の大気汚染物質の濃度が高まると、植物において、葉の老化加速、クロロフィルの欠損、葉の器官離脱などを引き起こす。この被害の程度は交通量、工場の有無により変化し、異なる地域で大気汚染物質による街路樹への影響は異なっていると考えられる。本研究では、京都市内の大気汚染物質濃度が高い調査地として『大宮』『南』、中間調査地として『山科』、低い調査地として『上京』『西ノ京』の5つの調査地を設定し、京都市内で多く植えられているイチョウ・ヒラドツツジの切り枝を用いて実験を行った。Li6400によるガス交換測定で光‐光合成曲線、A-Ci曲線の作成し、光合成パラメータを推定した。また、光学顕微鏡による葉の内部構造の観察を行い、異なる生育環境下での大気汚染物質濃度の違いによる、光合成応答や葉の形態の差を評価した。葉の分析の結果、イチョウでは葉面積やVcmax、Jにおいて南-上京、西ノ京―上京、南-山科間で有意な差が見られたが、光-光合成曲線、LMAに有意な差はみられなかった。また、ヒラドツツジでは光合成パラメータ、LMA、葉面積、SPAD値、全てにおいて有意な差は見られなかった。このことから、京都市の5つの調査地に生育するイチョウとヒラドツツジの光合成機能に対する大気汚染物質の影響は低いと考えられる。


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