| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-105 (Poster presentation)

風衡地におけるハイマツ群落の発達と外生菌根菌群集

*小泉敬彦, 奈良一秀(東大・院・新領域)

国内の高山帯ではハイマツが優占する植生帯が広がる. 中でも風衡地は主要な実生更新の場となっており, 成長過程にある様々なサイズの群落がパッチ状に点在する. ハイマツを含むマツ科樹木は外生菌根菌(以下, 菌根菌)と共生関係を構築することが知られる. 自然界では菌根菌と共生しなければ生存することが出来ないことから, ハイマツの実生定着および群落成長において菌根菌の果たす役割は大きい. しかし高山生態系において, 菌根菌に関する知見は未だ乏しい. 本研究では 1)実生定着に関与する菌根菌群集, 2)群落サイズの増加に伴う菌根菌群集の変化, そして 3)土層の違いによる菌根菌群集の違いを明らかにすることを目的とした.

2014年の9月に乗鞍岳において調査プロット(0.5ha)を3カ所設置し, サンプリングを実施した. 各プロットにおいて20の実生(林冠サイズ5cm×5cm以下)と40の成木(林冠サイズ0.1m2以上)を選び、それぞれから菌根を含む土壌コアを採取した. 成木群落では縦横サイズを計測し, その中心部において鉱質土層およびリター層から個別に土壌を採取した. 採取した土壌に含まれる外生菌根を実体顕微鏡下で形態によって類別し, 各3反復を確保してDNA抽出サンプルとした. rDNAのITS領域をPCR法にて増幅し, 得られた塩基配列を97%以上の相同性でクラスタリングすることでOTU作成を行った.

1) 実生菌根にはSebacinaが最も優占し, Rhizopogon, Suillusが次いで多く出現した. 2) 成木群落ではサイズ変化に伴う菌根菌群集の変化は認められなかった. 3) 鉱質土層とリター層の間では菌根菌群集が大きく異なった. 遷移後期種とされる菌根菌種はリター層で最も優占したが, 種多様性は鉱質土層で最も高い値を示した.


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