| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-109 (Poster presentation)

春日山原生林の異なる空間スケールにおける外生菌根菌群集構造

*和中愛由,松田陽介(三重大院・生資),菊地淳一(奈教大)

外生菌根菌は、温帯の森林の主要樹種であるマツ科やブナ科などと相利共生する。奈良県の春日山原生林(以下、原生林)は、暖温帯域の自然植生である照葉樹林が1200年以上にわたり保存されている。外生菌根菌のニッチは、宿主樹木より小さいとされており、種多様性が高いと考えられる。そこで、本研究は外生菌根菌群集の多様性を異なる空間スケールにおいて明らかにすることを目的とし、原生林と近隣のコナラを主とする二次林で外生菌根菌を調べた。原生林に設定した1 ha調査地内と2 km離れた二次林内に16x16 mのサブプロットを3カ所ずつ設置し、各サブプロット内に、16x16、8x8、 4x4、 2x2 mの4つのサンプルプロットを北東の角が重なるように設定した。原生林についてはさらに内側に1x1、0.5x0.5 mの2つのサンプルプロットを設定し、各プロットの頂点から直径5 cmのコアサンプラーを用いて、深さ10 cmまで土壌を採取した(コア数合計は原生林63個、二次林39個)。土壌コアから菌根を取り出しDNAを抽出、外生菌根菌のITS領域の塩基配列を決定した。得られた配列は97%の相同性でクラスタリングし1MOTUとした。DNA解析の結果168MOTUを得た。原生林と二次林の1サブプロットのMOTU数は、それぞれ26~28、16~20だった。全サブプロットのいずれの距離間においても空間的自己相関はなくコア間の非類似度は高かった。原生林と二次林間の群集組成は、各調査地内のサブプロット間より、非類似性が高かった。照葉樹原生林では、多様な外生菌根菌種が局所(50 cm以下)的に多数分布する可能性が示唆された。Chao2による推定MOTU数は、原生林で184、二次林で167であり、宿主の種数に比べて同所的に共存する外生菌根菌は非常に多様性が高いと考えられた。


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