| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-124 (Poster presentation)

繁殖干渉による花形質の形質置換

*木村真美子,堂囿いくみ(学芸大・院・環境科学)

生殖的に隔離された近縁な2種が同所的に分布した場合,他種の適応度が低下することがある。この時,生殖隔離が強化され,形質が分化することが知られている。

シソ科ヤマハッカ属のカメバヒキオコシ(Isodon umbrosus var . leucanthus)とセキヤノアキチョウジ(Isodon effusus)は,2種が同所的に生育している場合があり,2種の送粉者としてトラマルハナバチが観察されている。よって,2種の間に交雑の可能性が考えられる。本研究では,カメバヒキオコシとセキヤノアキチョウジの生殖隔離の有無,形質分化を明らかにすることを目的とした。

東京都奥多摩地域にて,(1)生殖隔離の程度を明らかにするため人工受粉実験(同種交配および異種交配)をおこなった結果,異種交配は同種交配より種子生産が低かった。(2)同所的集団(三頭山・神戸岩)と単独集団における自然状態の結果率を比較したところ,三頭山では2種ともに単独集団より低く,神戸岩ではカメバヒキオコシのみ単独集団より低くなった。(3)種子生産に影響する要因を調べるため,花筒長・訪花頻度・開花フェノロジーを測定した結果,花筒長:三頭山ではカメバヒキオコシは単独集団より短く,神戸岩では単独集団と違いはなかった。セキヤノアキチョウジは同所的集団と単独集団で違いはなかった。訪花頻度:同所的集団ではトラマルハナバチが2種に訪花していた。三頭山では,カメバヒキオコシにミヤママルハナバチが多数訪花していた。開花フェノロジー:三頭山では2種の開花ピークはほぼ同じであったが,神戸岩ではずれていた。

以上の結果から,2種間には生殖隔離が働いており,各同所的集団で種子生産の結果が異なることから,三頭山では花筒の長さ,神戸岩では2種の開花フェノロジーのピークのずれによって,生殖隔離が強化されている可能性が考えられる。


日本生態学会