| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-133 (Poster presentation)

新潟市海岸林における常緑広葉樹の増加と鳥類の果実利用の関係

*植木真理,中田 誠(新潟大・自然科学)

新潟県は常緑広葉樹の分布北限に近いが、新潟市中央区の海岸クロマツ林では多数の常緑広葉樹が生育している。これらは周辺市街地の庭木を母樹として鳥類によって種子散布されたものが起源と考えられる。本研究では、多様な常緑広葉樹が生育する新潟市海岸林において、常緑広葉樹の増加と鳥類の果実利用の関係を明らかにすることを目的とした。

タブノキの果実期の夏~秋に鳥類捕獲を行うとともに、林縁の結実木に対してビデオカメラによる撮影を行った。また、冬季にも鳥類捕獲を行い、糞に含まれる種子から利用した樹種を特定した。

タブノキの観察の結果、ムクドリとヒヨドリの果実利用が確認され、糞分析ではヒヨドリと大型ツグミ類3種からタブノキの種子が検出された。植生遷移によって林内で常緑広葉樹が多くなると、タブノキの主要な種子散布者が開けた環境を好むムクドリから、樹林を好むヒヨドリや大型ツグミ類へ変化していったと推測された。

冬季調査で得られた種子のうち、常緑広葉樹は全体の約8割を占めた。最も検出数が多かったトベラをはじめ、小型果実を付ける樹種の種子はメジロの糞から最も多く検出された。新潟県ではメジロは冬に南の暖かい地方へ移動する個体が多いとされるが、現在の新潟市の海岸部では積雪量や積雪日数が減少しており、それが冬季の海岸林に滞在するメジロを増加させ、この時期に小型果実を付ける樹種の分布拡大に寄与していると考えられた。ヒヨドリとシロハラは、モチノキ、シロダモなどの大型果実を選好していたが、それらがなくなる1~2月頃から小型果実を利用していた。このように、林内の果実資源の時期的な変化が鳥類の選好性に変化をもたらし、小型果実の常緑広葉樹の分布拡大にメジロとともに寄与している可能性が示唆された。


日本生態学会