| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-136 (Poster presentation)

同所的に生息するニホンジカとニホンカモシカの採食物構成の比較

*島村咲衣(岐阜大院・応用生物科学),安藤正規(岐阜大・応用生物科学),安藤温子(京都大院・農),中原文子(京都大院・農),高柳敦(京都大院・農),井鷺裕司(京都大院・農)

近年問題となっている日本各地でのニホンジカ(以下シカ)の増加・分布拡大によって、同じく大型草食動物であるニホンカモシカ(以下カモシカ)と分布の重複する地域は増大していくと考えられる。そのような地域では、両種の間で環境や餌資源をめぐる競合が生じると予想される。しかし、両種の競合についての研究は少なく、詳細は不明である。本研究では、現在両種が同所的に生息している岐阜大学位山演習林(以下位山演習林)において、両種の採食植物構成を詳細に把握し、競合状況を餌資源の利用状況から明らかにすることを目的とした。

位山演習林で採取した両種の糞95サンプル(シカ:73、カモシカ:22、PCR-RFLP法を用いて判別)から採食植物のDNAを抽出し、草食動物の食性解析に有用なバーコード領域である葉緑体trnL P6loop領域をPCR増幅し、次世代シーケンサーを用いて塩基配列を決定した。得られた塩基配列を、位山演習林に生育する維管束植物約180種から作成した同領域の塩基配列データベース、およびNCBIから取得した塩基配列データベースと照合し、採食植物を同定した。

結果、両種の糞から多様な採食植物が検出された。chao指数を用いたnMDSおよびANOSIMによって、通年の採食植物構成について両種間で比較をおこなった結果、明確な差異はみられなかった。発表では、両種の採食植物構成について、季節および糞の採取地点による採食植物構成の差異の評価や、顕微鏡を用いた糞分析による採食植物の量的な評価もあわせて提示する予定である。


日本生態学会