| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-141 (Poster presentation)

多摩丘陵の異なる森林タイプ間での鳥類による種子散布の違い

*松山美帆(東京農工大大学院),星野義延(東京農工大大学院)

鳥類は分離された環境間の種子散布者として重要な役割を持っている。鳥散布型植物と果実食鳥の研究は種子散布共生や逸出植物の問題等により注目され、これまでに多くの研究が行われている。しかし、異なる森林タイプ間で鳥類による種子散布の比較を行った研究は少ない。本研究では多摩丘陵の異なる森林タイプ間において、鳥散布型植物の種子がどのように散布され、分布しているかを明らかにすることを目指した。また、人工止まり木が鳥類を誘引する効果がある(境ら2001)ことから、鳥類が林内に持ち込む種子を効率よく回収するために、種子トラップに設置した止まり木の効果も検証することとした。

コナラが優占する雑木林とスギ人工林の過去の2時期のフロラリストから鳥散布型の植物の分布変化を比較した。また、2013年秋に種子トラップを設置し、異なる森林タイプ(人工林、雑木林尾根、雑木林沢)と止まり木条件(有無)の6条件で散布種子を回収した。さらに、結実調査と鳥類のセンサス調査を行い、散布者や種子の移入を把握した。

2次期のフロラ比較から、分布を広げた植物のうち81種は鳥散布型の植物であった。種子トラップ調査の結果、アオハダなど12種類の鳥散布型の種子を回収できた。回収種子は止まり木有の人工林で最も多く、止まり木無の雑木林沢で最も少なかった。森林タイプごとに比較すると止まり木無間では差がなかった。雑木林尾根では止まり木の有無で鳥散布型の種子回収数に差がなかった。一方で、人工林と雑木林沢では止まり木有の方が有意に多くの鳥散布型種子が回収された。人工林と雑木林沢では低木層が未発達で、雑木林尾根は低木層が発達していたため、森林内に散布される鳥散布型の種子の持ち込みには、森林タイプより森林の階層構造、特に低木層の発達の程度が関係していると考えられた。


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