| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-144 (Poster presentation)

ヤナギルリハムシ幼虫の食害が節足動物群集に与える影響

*平野 滋章 (京大 生態研),大串 隆之 (京大 生態研)

陸上生態系では、植物は餌や住居を節足動物に提供している。これまで、節足動物による植物の利用には、植物の形態や防衛物質などの表現型が大きく関わっていると考えられている。最近になって、植食性昆虫による食害が植物の防衛物質の量を増加させ、その効果が同じ植物を利用する他の節足動物にまで波及することがわかってきた。このような植食性昆虫による植物を介した間接的な効果は、単に一種の受け取り手だけでなく、群集を構成する複数種に同時に影響を与える。そのため、植食性昆虫の食害による植物の防衛形質の変化は、陸上節足動物群集の形成に関わる重要なメカニズムとして注目され始めている。しかし、植食者による食害が植物上の群集構造に与える影響はまだ理解できていない。

本研究では、ジャヤナギと、ヤナギ科のスペシャリスト植食者であるヤナギルリハムシ幼虫(以下ハムシ幼虫)を用いて、ハムシ幼虫による食害が、その後ジャヤナギ上に形成される植食性昆虫の群集構造に与える影響を調べた。ポットに挿し木したジャヤナギの株をガラス温室内で育成し、ハムシ幼虫に食害させる処理と食害させない処理に分けた。その後、ジャヤナギの株を野外のヤナギ林園に移動し、各株を訪れる節足動物の種と個体数を記録し、株ごとの植食性昆虫の群集構造、個体数、種数、均等度を処理間で比較した。その結果、植食性昆虫の個体数と種数には処理間で有意な差は見られなかった。一方、ハムシ幼虫の食害によって、ジャヤナギを利用する植食性昆虫の群集構造が変化し、また均等度が低下することが明らかになった。これは、優占種であるヤナギルリハムシ成虫の個体数が食害株で増加しことと、ヤナギケアブラムシなどの個体数が食害株で減少したことによると考えられる。


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