| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-154 (Poster presentation)
ハワイ諸島の固有優占樹種である、ハワイフトモモ (フトモモ科) は、島内の多様な環境に適応し、海岸から高山帯、先駆相から極相までの森林を構成する。標高の異なる集団間では、環境条件 (気温、降水量、土壌年代) に応じて樹高や葉形質に著しい変異が観察される。野外では集団間遺伝子流動が認められる一方、共通圃場では野外集団で観察される葉形質が維持されており、本種の葉形質多型には遺伝的基盤があり、集団毎に異なる自然選択を受けていると推察される。本研究では、本種における異なる環境への適応プロセスを解明するために、ゲノムレベルでの遺伝的分化を調べ、中立遺伝子座および適応に関わる候補遺伝子座を識別し、両者の時空間的変動パターンを比較する。
ハワイ島マウナロア山麓9集団 (5標高2土壌年代) に由来する96個体について、RAD-seqにより12369 SNP遺伝子座を得た。その中から中立遺伝子座を1239座、適応候補遺伝子として、統計的に高いFSTを示すアウトライヤー遺伝子座を106 座、及び、葉形質と相関する対立遺伝子頻度を有する2遺伝子座を特定した。中立遺伝子座におけるペアワイズFSTは平均0.07であり、標高間だけでなく土壌年代間においても緩やかな集団間分化が見られた。適応候補遺伝子座は、高い集団間分化を示し (平均ペアワイズFST = 0.482)、新たに解読した本種のゲノム配列及びシロイヌナズナゲノムを参照した結果、機能遺伝子の近傍に位置する可能性が示唆された。発表ではこれらの結果を踏まえ、本種の空間遺伝構造を形成する要因について考察する予定である。