| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-156 (Poster presentation)
有殻腹足類は殻口辺縁部に炭酸カルシウムを少しづつ付加することで殻を成長させる.そのため腹足類の殻には成長の履歴,例えば成長線など,が残っている.また多くの腹足類では外唇部で内唇部より大きく成長するため,らせん状の殻をもつ.つまり殻口辺縁部での成長勾配のパタンが殻の形態を決定するとみなすことができ,形態的な多様性は成長勾配という発生的な基盤の多様性として理解されうる.ではどうやって殻の成長勾配は制御されているのだろうか? 近年の発生生物学的研究により殻の成長勾配パタンは成長因子であるDppの勾配に一致することが示唆されている(Shimizu et al., 2011; 2013).こうした発生生物学的な実験結果との定量的な比較が殻形態の多様性の理解を進める上で必要である.
本研究では,腹足類の殻形態から成長勾配を推定する方法を提案し,その有用性を議論したい.殻の成長勾配はGrowth Vector Model またはMap (GVM)により記述される(Hammer and Bucher, 2005).しかし,GVMはその自由度の高さゆえに,標本からの定量化は極めて困難である.本研究では成長管モデル(Okamoto, 1988)と呼ばれるあらゆる巻きパタンを記述できる低自由度の形態モデル介することでGVMをCTデータから推定する方法を開発した.成長管モデルのパラメータと殻口形状からGVMへの変換式を導出し,この式を利用しGVMを推定する.また,実際のCTデータからもGVMを推定をおこない,結果の妥当性を検討する.