| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-159 (Poster presentation)
近年、形質の進化は個体数変動や群集の構成変化と同じ時間スケールで起こりうること、さらにこのような「迅速な進化」と個体群動態はお互いに影響を及ぼしあうこと(生態と進化のフィードバック)が明らかになってきた。しかし、適応トレードオフの形といった、遺伝的多様性の質的な違いが生態と進化のフィードバックにどのような影響を与えるかについては、理論的な予測と実験検証の間に、未だ大きなギャップがある。本研究では、ワムシと藻類からなる捕食被食系のミクロコズムを用いて、捕食抵抗性と増殖力の間の適応トレードオフの形の違いが生態と進化のフィードバックに及ぼす影響を調べた。その結果、適応トレードオフの形の違いが、異なる個体群動態と進化動態を引き起こしており、また、同じトレードオフの形でもわずかな環境の違いが、その後の生態と進化のダイナミクスを大きく変化させていた。 これらの実験結果は、適応トレードオフの形の違いに起因した生態と進化のフィードバックの結果として、数理モデルによって定性的に説明できる。本研究は、生態と進化のダイナミクスを理解するために、集団がどのような遺伝的多様性をもっているか、特に適応トレードオフの形のような種内変異の質に注目する必要あることを示唆している。