| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-169 (Poster presentation)

共生相手を認識するための暗号の複雑さの進化

*内海邑(総研大・先導研), 大槻久(総研大・先導研), 佐々木顕(総研大・先導研)

相利共生ではその相互作用に先立ち、様々なシグナルを用いた共生相手の認識が行なわれる。例えばマメと根粒菌の共生を例にとると、マメは根から特有なフラボノイドを分泌しており、根粒菌はそのフラボノイドを認識し Nod 因子と呼ばれる化合物を合成、分泌する。マメはこの Nod 因子を認識し、特定の Nod 因子をもつ根粒菌とのみ共生を開始する。このような認識機構によって、マメは種ごとにほぼ一対一対応で根粒菌と種特異的な共生を行なう。

マメと根粒菌のように多くの共生系では宿主と共生者の特異性は高い。しかしながら、高い特異性を実現する複雑なシグナルを用いると共生可能な相手が減少し、共生相手を獲得できない場合が増えてしまうはずである。このような不利益を乗り越えて、複雑なシグナルが宿主と共生者の間で共進化するメカニズムはいまだ明らかになっていない。

そこで発表者らはシグナルとその受容体をビット列の暗号で表現しこの問題に理論的に取り組んだ。具体的にはシグナル分子とその受容体における可変部位のアミノ酸配列を 01 のビット列に対応させ、ビット列の長さが長いほど、より複雑な暗号であるとする。そして、宿主と共生者のビット列の一致数が多いほど共生が成功しやすいとした。さらに宿主は * (ワイルドカード)を0、1の代わりに持つことができるとした。ワイルドカードは認識機構の欠如を意味し、そのビットに関してはどのような共生者も受け入れる。従って、宿主がワイルドカードを持たなくなるほど、より複雑な暗号を用いて厳密に共生者を認識していることになる。このような暗号の進化ダイナミクスを解析することにより宿主-共生者間の暗号が複雑化する条件を調べた。


日本生態学会