| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-178 (Poster presentation)

暖温帯落葉広葉樹林における分解呼吸速度の季節的なヒステリシス

*安宅未央子(京大・農)・小南裕志・吉村謙一・深山貴文(森林総研・関西)・谷誠(京大・農)

土壌有機物分解モデルの多くは、分解呼吸の温度に対する指数関数的な応答特性に基づいている。一方、森林土壌は分解特性の異なる様々な土壌有機化合物が混在し、基質特性の違いや他の環境要因(水分等)の影響によって、分解呼吸速度や、その温度依存性(Q10)は変化する。そのため、分解-環境応答の基質依存性評価の重要性が指摘されている。なかでも、易分解性炭素プールはサイズが小さいが、呼吸活性が高いために全分解呼吸速度の時間変動に対して大きな影響を及ぼす。本研究では、易分解性炭素としての落葉層に着目し、年間を通した連続測定データから、落葉層の含水比や基質特性が分解呼吸速度の温度依存性に与える影響を評価することを目的とした。

測定は暖温帯林である山城試験地(京都府南部)で行なわれた。野外において落葉層の分解呼吸速度と環境要因(温度・含水比)の連続測定を2年間行った。さらに、基質導入呼吸法を用いた、グルコース溶液添加による微生物の最大ポテンシャル代謝活性速度(SIR)の測定を並行して行った。

その結果、落葉分解呼吸速度は温度に従った大まかな季節変化を示す一方で、落葉層のぬれ-乾きに従った短期的な時間変動を示した。分解呼吸速度のQ10は含水比の影響を受け、低含水比下のQ10値の減衰が見られた。また、分解呼吸速度-温度の関係は季節的なヒステリシスを示し、等温度帯である春期と秋期の分解呼吸速度のピーク値の比較からは、春期の呼吸速度は秋期と比べておよそ1.5倍高くなった。さらに、SIR値も春期から秋期にかけて減少傾向を示したことから、分解の進行に伴う基質特性の変化が微生物の状態(バイオマス・組成)に影響を与え、分解呼吸速度に季節的なヒステリシスを引き起こしたと考えられた。


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