| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-188 (Poster presentation)

暖温帯コナラ林の里山における長期の管理が土壌生態系に与える影響の評価

*山田靖子(早稲田大・教育),松下華代(早稲田大・院・先進理工),山田理香(早稲田大・教育),友常満利(早稲田大・理工総研),小泉博(早稲田大・教育)

リターは、土壌生物や植物根への物質供給や、土壌温度や含水率といった土壌環境の緩衝作用を通じ、土壌圏炭素動態に大きな影響を与える。これまでの森林管理の一環として、森林からリターを除去する方法が行われており、短期間のリター除去は土壌呼吸や微生物バイオマスを顕著に低下させる事が報告されている。但し、長期の管理が土壌生態系に与える影響を調査した研究例は少ない。そこで、本研究では長期管理が土壌生態系に与える影響を評価した。

埼玉県の暖温帯コナラ林(里山林)において、管理放棄区(C)と10年間管理された区(M10)、40年管理された区(M40)の3区を設け、土壌呼吸及び環境要因(温度、土壌含水率、土壌硬度、土壌微生物バイオマスなど)を測定した。

その結果、2014年の年間土壌呼吸量は、C、M10、M40で各々3.8、2.9、2.5 kg CO2 m-2であった。これらの値において、10年、40年管理による土壌呼吸量は、放棄区の約76、66 %にあたり、管理が長期化すると土壌呼吸速度の減少が認められた。これらの差は特に夏季に顕著に確認された。各区画において年間平均土壌温度や土壌含水率には有意な差は認められなかった。微生物バイオマス量は各区で44、23、25 μg C / gであった。これらの値において、10年、40年管理によるバイオマス量は、放棄区の約52、57 %にあたり、管理により減少するものの、管理期間による影響は小さかった。その他、土壌硬度は管理強度に伴い上昇した。これらの結果、リターの除去は微生物バイオマスを減少させ、また土壌密度を上昇させることで、土壌呼吸速度を低下させていると考えた。


日本生態学会