| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-012 (Poster presentation)

水草の系統的群集構造に対する水質の効果

九大・理・生態

水草の系統的群集構造に対する水質の効果

遠山弘法 (九大・理・生態)

人間活動による生息地の攪乱は群集組成を変える最も重大な要因の一つである。特に、淡水生態系は過去50年間の間に行われた水環境の改変、人を介した生物移入、高レベルの栄養素負荷により大きく変化している。このような水質環境の変化と種多様性の間の関係はよく研究されているが系統的群集構造との関係はほとんど研究されていない。系統的群集構造解析を行うことで、水質汚染による環境制約と群集内の種間の競争排他の相対的重要性を間接的に明らかにすることができる。本研究では、この系統的群集構造解析という手法を用いて、局所的な水草群集の種組成における環境制約と種間の競争排他の相対的な重要性を明らかにすることを目的とした。調査地は近年水質汚染が進んでいる中国チャオシー川で、河口から上流に向かい47プロットを設置し植生調査を行った。1プロット(50m×2m)は24サブプロット(30cm×30cm)からなり、サブプロットに出てくる水草の種をすべて記録した。それぞれの種の個体数の指標として出現したサブプロットの数を利用した。分子系統樹はrbcL、matKの配列からベイズ推定した。予想された通り、種多様性、系統的多様性は水質の悪化とともに減少した。また、全体的に水草群集は系統的に偏った分類群で構成され、水質の悪化とともにその偏りは大きくなった。群集間を比較すると水質によって系統的な置換わりが生じていた。上記の結果は水質が水草群集の種組成、系統的組成を決めるうえで需要であることを示唆する。


日本生態学会