| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-025 (Poster presentation)

チベット高山草原における標高と放牧圧の違いに着目した植生構造とその変化ー2007年から2014年の変化ー

*廣田充(筑波大・生命環境系),下野綾子(筑波大・生命環境系),白石拓也(アイシーネット(株)),李英年(中科院・西北高原生物研究所),古松(南開大学),杜明遠(農環研・大気環境),唐艶鴻(国環研・生物生態系環境セ)

チベット高原の大部分を占める高山草原は、主要な炭素の吸収源として役割にくわえて、農耕地や放牧地としての役割を担っているが、近年この高山草原では、過放牧による草原退化が問題となっている。過放牧が草原に及ぼす影響を理解するうえで、放牧が存在しない状況での植生構造を知ることが不可欠であるが、長年放牧地として利用されている草原ではそれを伺い知ることは容易ではない。そこで本研究では、保護区を設置しその保護区と保護区に隣接して設けた対照区を長期モニタリングすることで、放牧が無い状況下での植生構造の把握とその変化の解明を目的としている。我々は夏期放牧地として利用されている中国青海省の海北草原の山岳斜面に広がる高山草原を対象として、標高3600m、3800m、4000m、4200mの位置に保護区(20m x 5m)を2006年に設置し、各保護区と対照区において植生調査を2007年、2008年、2010年、2014年に行った。2010年までは、両区でコドラート(1m x 1m)を設けて出現種数と植物バイオマスを調査し、2014年は近接写真による種同定と被度推定を行った。その結果、保護区の植物バイオマスは3年間で1.6から3.5倍に増加していた。機能群ごとに見ると、低標高域ではイネ科・カヤツリグサ科が、高標高域では広葉型の増加が顕著であり、標高によって機能群の増減パターンが顕著に異なっていた。また放牧の影響も標高によって大きく異なっており、保護区と対照区を比較した場合、低標高域では植物バイオマスの約5割が減少したが、高標高域では約3割程度の減少にとどまっていた。


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