| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-049 (Poster presentation)

鳥による種子散布は樹木の更新に役立つか?―実生の発生・生残への影響―

*直江将司(森林総研),正木隆(森林総研),山崎良啓(京大院農),酒井章子(京大生態研)

周食型種子散布は植物全体の30%以上で見られる一般的な散布様式であり、動物の行動によって決定されるというプロセスの面白さから、多くの研究がなされてきた。しかし、先行研究は散布プロセスのみに注目したものが多く、散布が植物の更新に果たす役割を直接的に評価したものは少ない。

本研究は、鳥による散布が植物の初期更新に与える影響を明らかにすることを目的とし、以下の2つの効果を検証した。1)採食の効果:果実食鳥による果肉の除去によって、実生の発生数は増加するか?2)散布距離の効果:種子が成木から離れるほど実生の生残率は増加するか?

調査は液果樹木10種(ミズキ、ヤマボウシ、ウワミズザクラ、カスミザクラ、ハリギリ、コシアブラ、ツリバナ、ツルマサキ、アオハダ、ツタウルシ)を対象に、関東の冷温帯落葉広葉樹林で行った。2006~2008年にかけて、6haプロットに格子状に327個の種子トラップを設置し、対象種の鳥散布・自然落下種子を回収した。またトラップ横にコドラートを設置して実生の発生を記録し、その生残を9年間追跡した。実生の発生数は、鳥散布種子数、自然落下種子数、成木からの距離、共変量(光、リター厚、土壌水分、傾斜、ササ・川の有無)を説明変数としたGLMで解析した。実生の生残数は、成木からの距離、共変量を説明変数とし、実生発生数をオフセット項としたGLMで解析した。解析の結果、鳥散布種子と自然落下種子の影響には質的な違いが見られ(3樹種)、また鳥散布種子数が多いほど実生発生数は増加した(6樹種)。また、成木からの距離が長いほど実生の生残率は高くなった(9樹種)。以上から、鳥による散布は採食や散布距離を介して植物の初期更新におおむね正の影響を与えていることが明らかになった。


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