| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-053 (Poster presentation)

シナノザサ開花後1年間の生残

鈴木重雄(立正大・地球環境)

シナノザサ(Sasa senanensis Rehder var. senanensis)を含むササ属では、全面開花とその後の一斉枯死のほか、部分開花も見られその開花メカニズムの研究が進められている。しかしながら、ササ属の開花頻度は低く、開花ジェネットの稈の動態には不明な点も多い。発表者は、2013年に上高地徳本峠登山道沿いの4地点(最大100×40 m程度の範囲)で、複数の稈が開花している事を発見し、固定区の設定およびササ稈の動態の継続調査を始めた。

2013年に開花の見られた2箇所(A・B地点)に10 m四方の方形区を3区ずつ設定し、2013年10月と2014年10月にシナノザサの稈の状況(生、枯死、開花)と根際直径を計測した。両地点はいずれも土石流ローブ上に形成されたウラジロモミ林であり、2013年には林床ではシナノザサが優占していた。

A地点では、1年間で稈の枯死が進み、A-1地点では47%、A-2では10%まで生存稈が減少した。開花稈がほとんど見られなかったA-3地点では枯死は進行しなかったが、いずれも当年生の稈は少なかった。一方、B地点では、開花した稈の枯死は見られたものの、それ以外の稈の枯死は、開花が多く見られたB-1、B-2両地点でも少なく、当年生の稈も多数確認できた。根際直径から算出したシナノザサの断面積合計も増加が見られた。

以上の事から、シナノザサの開花は必ずしもその場所のササ全面枯死に結びつくものでは無いことが確認できた。これにはその地点に生育しているササのジェネット構造に起因する事も考えられる。今後は、本地点の稈動態を引き続き調査すると共に、シナノザサの枯死が林床の植生構造にどのように作用するのか調査を継続して明らかにしたい。


日本生態学会