| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-062 (Poster presentation)

ボルネオ熱帯林における標高と窒素制限の違いが葉と細根の養分利用特性に及ぼす影響

*宮本和樹,和頴朗太,相場慎一郎,Reuben Nilus

標高や土壌の窒素制限の違いが熱帯林の優占樹種の養分利用に及ぼす影響を明らかにするため、土壌の養分環境の異なる森林タイプで優占樹種の葉の窒素濃度と細根のバイオマスを求め、土壌窒素との関係を調べた。調査サイトはマレーシア、サバ州(ボルネオ島)のMaliau Basin(標高約1000 m)とNabawan(標高約500 m)である。2つのサイトでは、東南アジア熱帯林の典型である混交フタバガキ林のほか、ポドゾルとよばれる貧栄養土壌に発達する森林がみられマキ科のDacrydiumやナンヨウスギ科のAgathisといった球果類が優占する森林が分布している。これらの森林タイプ(サイト毎に3タイプ)に50 m×50 mの調査区を設置し、胸高周囲長15 cm以上の個体について毎木調査を行った。各調査区の優占種については樹上の生葉および落葉のサンプリングを行い、窒素濃度を測定した。また、表層15 cm深の土壌のコアサンプリングを行い土壌の無機態窒素および細根(直径2 mm以下)のバイオマス推定を行った。優占種の生葉と落葉の窒素濃度は土壌の無機態窒素量が少ないサイトほど低くなっており、球果類の優占する森林タイプで特に低くなっていた。細根バイオマスは0.38~1.42 kg m-2の範囲であった。線形混合モデルによる分析の結果、土壌の無機態窒素量と標高を説明変数とするモデルが選択され、無機態窒素量が減少するほど細根量が大きくなり、標高が高いサイトの方が低いサイトよりも細根量が大きくなる傾向が示された。以上のことから、標高や土壌のポドゾル化に関連する窒素制限の程度が優占樹種の葉の窒素濃度や細根バイオマスのバリエーションに影響していることが示唆された。


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