| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-069 (Poster presentation)

表皮細胞の形態が花びらの多様な撥水効果を生み出す

*渡辺綾子,種子田春彦

被子植物では、送粉者へのディスプレイとして様々な色や形の花が進化してきた。これらの花の色や形態の多様さを作り出しているのが花被である。花被を構成する表皮細胞は、花被の外側に凸な形態をしていたり、クチクラが突き出てできた縞状構造で表面が覆われていたりするなど他の組織とは異なる、特徴的な形態を持つ。こうした表皮細胞の形態が持つ機能として、花被表面の撥水性や濡れ性に注目した。長期間の濡れは、花被内部への水の浸潤の危険性や力学的負荷がかかることによって花の構造が壊れる危険性をはらんでいる。しかし、多様な表皮細胞の形態的特徴と表面の濡れ性の関係についてはあまりよくわかっていない。

本研究は、本郷キャンパスに生える47科91種について、表皮細胞の形態の観察と花被上の水滴の接触角の測定を行った。乳頭型、レンズ型、平面型のかたちをした表皮細胞を持つ花被の割合は、向軸側で35 %、37 %、28 %であり、背軸側で16 %、48 %、36 %であった。またクチクラの縞をもつものの割合は、両方の面ともに60 %であった。この割合は、Kay & Daoud 1981の報告と大きく異なっていた。測定された花被上の水滴の接触角は、19 °から152 °までと多様であった。さらに3つに分類された表皮細胞の形態で比較すると、乳頭型>レンズ型>平面型の順で花被上の水滴の接触角の平均値は大きかった。また、乳頭型と平面型では、表皮細胞にクチクラの縞を持つことで、接触角は大きくなる傾向があった。しかしながら、同じ形態に分類された表皮細胞を持つ花被でも、種によって接触角には大きな幅があった。これは、表皮細胞の大きさや凹凸具合との関連が予想される。

当日の発表では、解剖学的な特徴も含めた表皮細胞の形態と花被上の水滴の接触角の関係や、こうした関係の生態学的意義について考察する。


日本生態学会