| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-075 (Poster presentation)

ポリアミンによる未知の光合成促進

*坂田剛(北里大), 安元剛(北里大), 中野隆志(富士山科学研), 佐藤駿一(北里大), 末弘宗滉(北里大), 杉村尚倫(北里大), 松山 秦(北里大), 神保 充(北里大), 渡部終五(北里大)

光合成を行っている葉では,大気中のCO2が気孔,葉内空隙と拡散した後,葉肉細胞の細胞壁表面でアポプラスト液相にCO2が溶解し葉緑体内に達する。植物の光合成は葉緑体内のCO2濃度に強く制限を受けており,アポプラスト液相から葉緑体内へのCO2輸送にはアクアポリンなどタンパク質による拡散促進機構が存在し光合成に寄与していることが示されてきた。

ポリアミン類は分子内に複数のアミノ基を有する低分子化合物で,すべての生物体内にmMという高濃度で存在する。近年,著者らのグループはポリアミンが水溶液へのCO2溶解を促進し,海洋生物のCaCO3骨格形成に寄与していることを見いだした。植物においても,ポリアミンがアポプラスト液相へのCO2溶解を促進し,光合成に貢献している可能性は高い。これを検証する以下の実験を行った。

ポリアミン溶液に溶解した大気CO2をルビスコが利用可能か検証するため,半精製ルビスコ,イタドリの葉の粗抽出液に,大気CO2を溶け込ませたポリアミン溶液を加えた。その結果,いずれも高い速度でCO2固定反応が進行することが明らかになった。ついで,切断した葉柄からポリアミン溶液を葉に付与した結果,光合成のCO2利用効率が上昇することが明らかになった。この上昇には,反復間差,種間差が存在し,実験開始前の内在性ポリアミン濃度の違いや,生体膜のポリアミン輸送体活性の違いが影響していた可能性がある。これらのデータはポリアミンが葉肉細胞表面からルビスコまでのCO2輸送を促進し光合成に寄与していることを強く示唆している。


日本生態学会