| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-077 (Poster presentation)

森林林冠木の光をめぐる競争における個体間相互作用の定量化の試み

*彦坂幸毅, 山口大輔, 長嶋寿江 (東北大・院・生命科学), 中路達郎, 日浦勉 (北大・FSC)

植物群集内では光が最も成長を律速しやすい資源の一つであり、種間・個体間では光をめぐる競争が起こっている。植物は光獲得競争に勝つために様々な戦略をもっている。どのような戦略が有効なのかは、隣接個体との間にどのような相互作用があるかに依存する。葉が受ける光は、その葉が属する個体の葉群を通過してきた光と、隣接個体の葉群を通過してきた光があるため、一枚の葉の受光量は自身の葉群構造と隣接個体の葉群構造の両方の影響を受ける。理論的な研究では、隣接個体の影響の大きさによって進化的に安定な戦略が大きく変わることを示してきた。Hikosaka et al. (2001 Functional Ecology, 15: 642-646) は、光獲得における隣接個体の影響の大きさを定義し、指標イータを提案した。このイータは野外において定量化が可能である。Hikosaka et al. (2001) は一年草の実験群落でイータを実測し、隣接個体の影響が非常に大きいことを示した。しかしこのあとイータが実測された例はなかった。本研究では、森林樹木を研究対象とした。多くの場合森林では個体の葉群は接してはいても空間的に混じることはないことから、一年草の群落に比べ隣接個体の影響が小さいと予想される。本研究では二つの方法によってイータの実測を試みた。一つは、標的個体の葉に感光フィルムを貼り付け、標的個体の周囲を伐倒し、伐倒前後で受光量の変化の大きさからイータを算出する方法である。もう一つは、標的個体の葉群内で光強度を測定し、標的個体の伐倒前後の光強度の変化の大きさからイータを算出する方法である。本発表では30年生ウラジロモモミ林において簡易タワーを建て、これらの測定を行った結果を紹介する。


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