| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-105 (Poster presentation)
腐朽木中には多様な菌類が生息し,分解を行っている。ブナ属およびコナラ属の腐朽木における真菌類群集の構造と分解速度の関係を明らかにするために,長期固定プロットにおいて野外調査を行った。異なる時期に枯死した腐朽木の材密度と枯死してからの年数(最大で約13年)の相関関係から分解速度を解析したところ,ブナ属はコナラ属よりも速く分解していた。枯死材中からDNAを抽出したところ,ブナ属から120タイプ,コナラ属から112タイプの真菌類が採集された。実際の材密度と枯死後の年数から期待される材密度の差を分解速度の指標とし,真菌類群集の属性との関係を解析したところ,ブナ属では真菌類のタイプ数,タイプ構成と分解速度の間に相関関係が認められたが,コナラ属では群集属性と分解速度の間に相関関係は認められなかった。SEMによる分析の結果,ブナ属枯死木上では枯死後の年数が群集構成の変異の一部を,その群集構成の変異の一部が分解速度を説明していた。また,環境要因で説明されない群集構成の変異の一部と均衡度も分解速度の変異を説明した。これに対してコナラ属では分解速度は環境要因によって説明されなかった。分解の進行状況が真菌類群集に対して影響を及ぼす可能性は排除されていないものの,ブナ属では遷移過程による真菌類群集の遷移が分解を促進している可能性が示された。