| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-107 (Poster presentation)
多種の微生物から抽出したDNAから、特定領域を増幅して配列決定することで、含まれていた生物を網羅的に同定するメタバーコーディングは、微生物相を迅速に把握するツールとして注目を集めている。これを応用すれば、これまで不可能だった膨大なサンプル中の微生物相を把握した上で、群集組成の経時的変化や地理的な違いを議論することが可能になる。今回、新たに開発した塩基配列クラスタリング法、分子同定法を用いることで、八代海の夏期プランクトン相の変動と要因を解析した。調査は2011年と2012年の6~8月に4地点計26日行われ、フィルターで濾過してプランクトンのサンプルとした。同時に、水温、塩分、pH、クロロフィルa量などの環境データも収集した。サンプルから得たDNAは18S (SSU) rRNA領域を増幅し、Roche社GS FLXで塩基配列を約400bp解読した。サンプル識別用タグとシーケンシングアダプターをライゲーションで付加したためplus strandとminus strandの配列が混ざっているが、今回は別々に解析した。様々なフィルタリングを経て、最終的にplus strandで約62万、minus strandで約66万配列を使用した。97%の類似度で塩基配列をクラスタリングした結果、それぞれ1,395個、1,368個のOTUにまとまった。分子同定の結果、OTUに占める割合の多い順に、渦鞭毛藻、節足動物、珪藻、Spirotrichea、環形動物、軟体動物、緑藻、ラビリンチュラが認められた。これらプランクトン相の変動と統計的解析から得られた変動要因について報告する。