| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-113 (Poster presentation)
雪渓や氷河などの雪氷圏では、雪氷藻類と呼ばれる藻類が1次生産を担っている。雪氷藻類は液胞に蓄積した色素によって光障害を防いでいるが、これが太陽光の吸収を促進し雪氷の融解を促進していると考えられている。その分布様式を解明する事により、気候変動と氷河融解の関係性の解明につながるだろう。一方、雪氷圏という限定された場所に生息する雪氷藻類は、微生物群集の分散様式を理解するために有効な材料である。
雪氷藻類のなかで赤雪と呼ばれるChlamydomonadaceaeの2属と、接合藻類に属するMesotaeniaceaeの3属を対象とする。これらの藻類について、地球規模の環境サンプルからシングルセルベースでDNAを抽出し18S-ITS領域(約2500~2700bp)について解析を行った所、群集は広範な分布を持つ汎存種と固有種の両者から構成されているという結果が示された。しかしながら、シングルセルベースの解析では、サンプル数が限定されるため、「固有種」はサンプリング効果によって生じた可能性が否定できない。そこで、次世代シーケンサーを使用して大規模な解析を行い、群集レベルで遺伝子情報を比較する。対象地点は赤雪が21地点、接合藻類が6地点、対象領域は核の18S,ITS,26S、葉緑体のpsaB,atpBの計5領域、1領域約300bpとする。NGSで得られた配列データをもとに、対象種の群集構造と生物系統地理学について議論する。