| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-114 (Poster presentation)

共生者を介した宿主種間相互作用の動態に関する数理モデル

江副日出夫(大阪府大・院・理)

相利共生系に関する従来の理論研究の多くは、宿主と共生者はそれぞれ均質な個体からなる一様集団であることを仮定している。しかし現実の相利共生系は、それぞれの集団が複数の系統からなり、かつ共生相手に対する特異性が系統間で異なっている場合がある。だが、そのような宿主系統と共生者系統の多様性が相利共生系全体の動態にどのような影響を与えるのかは理論的にほとんど調べられていない。

そこで本研究では、マメ科植物と菌根菌の相利共生系をベースに、2宿主系統-2共生者系統からなる必須相利共生系についての数理モデルをたてて系の挙動を調べた。共生者は宿主にランダムに感染するが、2系統の共生者は互いに異なる宿主に対してのみ相利者としてはたらき、もう片方の宿主に対しては一方的に栄養を得るだけの寄生者であると仮定する。感染後、宿主側は共生者の質に応じたパートナー選択をするが、共生者の相対密度に応じたコストがかかるとする。

共生者間および宿主間でパラメータがほぼ対称な場合を解析した結果、パートナー選択において宿主が異なる共生者系統を識別する能力が大きいと、共生者を通じた正の密度効果がはたらくため、宿主間に直接的な競争がない場合でも初期密度が大きいほうの宿主が小さいほうの宿主を排除し、結果的に1宿主-1共生者(相利共生者)のみが残る。それに対して、宿主の識別能力が小さいと、共生者を通じた宿主の密度効果は負となり、全系統が共存する安定な平衡状態または周期振動があらわれる。このことから、相利共生系内の多様性が維持されるかどうかは、宿主のパートナー選択の能力に大きく依存していることが示唆される。


日本生態学会