| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-115 (Poster presentation)
下等シロアリは腸内に共生している微生物(原生生物、真正細菌、古細菌)の補助を得て木材のセルロースの消化をおこなっている。共生原生生物はシロアリの後腸に存在するが、それらは脱皮の際に失われる。そこで、巣仲間から肛門食により腸内容物を受け渡され、再感染させることで腸内の共生微生物を維持している。共生原生生物の種組成は宿主であるシロアリの種に特異的である。人為的にヤマトシロアリ(以下、ヤマト)とカンモンシロアリ(カンモン)を混在させたコロニーで飼育すると、両種の間で原生生物の移入が生じるが、ヤマトからカンモンへの移入が起こりやすいことが分かっている。
本研究では、シロアリの腸内に共生する真正細菌や古細菌との関係が移入の起こりやすさに影響するのではないかと考え、抗生物質処理による原核微生物の除去が2種のシロアリ間での原生生物の感染の方向性に与える影響を調べた。実験ではヤマトとカンモン60個体を容器内で30日間混合飼育したが、ヤマトに抗生物質処理をしたもの、カンモンに抗生物質処理をしたもの、両種に抗生物質処理をしたもの、処理をしなかったものの4実験区を設け、1ヶ月後、全生存個体腸内の原生生物の有無を観察した。抗生物質処理はアンピシリン含有ろ紙を7日間与えることで行った。
実験の結果、抗生物質処理はシロアリの生存率を下げる傾向が見られた。原生生物はヤマトからカンモンへ有意に移りやすい傾向が見られたが、抗生物質処理による感染の方向性への影響は検出できなかった。さらに飼育を60日間にした結果についても提示して議論する。