| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-177 (Poster presentation)
外来種による強い捕食圧は在来被食者の個体数を急激に減少させるだけでなく、行動における急速な適応的変化を誘発している可能性がある。本研究では1979年に奄美大島に侵入した外来捕食者マングースに対して、在来被食者アマミハナサキガエルの逃避行動が変化しているかどうか検証した。
奄美大島においては、マングース侵入地点からの距離が捕食圧の指標になることが知られており、侵入地点からの距離が遠い場所では捕食圧をほとんど受けていないと考えられる。また、現在ではマングースの防除により、捕食圧は非常に小さいと考えられている。我々はマングースの捕食圧履歴が異なる奄美大島各地において、カエルの対捕食者行動をFlight Initiation distance (FID:接近可能距離)並びにDistance Fled (DF:逃避距離)を用いて定量化した。気温や体サイズといった対捕食者行動に影響し得る要因も考慮した上で、空間自己相関を考慮したgeneralized least squares regression(GLS) methodsを用いて解析を行った。
その結果、在来カエルのFID、DF両方に対してマングース侵入地点からの距離の有意な負の効果が検出され、マングースの捕食圧に対してカエルの逃避行動が発達している事が示唆された。これは、外来種による強い捕食圧が選択圧として働き、在来種の行動における急速な適応的変化を誘発した可能性を示唆していると考えられる。