| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-181 (Poster presentation)
食植性昆虫の食草変更にはメス成虫の産卵選好性と幼虫の発育能力の同調した進化が必要だと考えられている.なぜなら,幼虫の移動能力は著しく低いため,幼虫の発育食草がメス成虫の産卵場所によって決まるためである.しかし,チョウ目など成虫と幼虫で明瞭に餌が異なる昆虫とは異なり,成虫と幼虫が共に植物を利用する昆虫の場合には,メス成虫は餌とする植物に産卵することが多く,自身の食物の選択と産卵植物の選択の区別は曖昧であり,そのうえ,成虫にとって好適な食草が幼虫の発育にも良好な食草となりえることから,成虫の摂食選好性と幼虫の発育能力の関係に注目する必要がある.
ニジュウヤホシテントウHenosepilachna vigintioctopunctataは主にナス科植物(Solanaceae)を食草としているが,東南アジアでは南米からの移入種であるマメ科のムラサキチョウマメモドキCentrosema molle(以下,チョウマメ)も併用する集団が報告されている.インドネシアでは19世紀にチョウマメを導入した記録があるため,テントウのチョウマメ利用は古くとも200年前に生じたと考えられている.インドネシアのボゴールで行われた経年調査では,チョウマメに対する成虫の摂食選好性と幼虫の発育能力が急速に向上したことが観察されている.本研究では,チョウマメへの適応が現在進行中と思われるバリ島の集団を用い,成虫の摂食選好性と幼虫の発育能力の相関解析を行った.その結果,明瞭な相関関係は認められなかった.よって,両者の形質が別々の遺伝的基盤を持つと考えられ,本種のチョウマメの利用能力の向上においては成虫の摂食選好性の変化が幼虫の発育能力に先行して進行している可能性が示唆された.