| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-182 (Poster presentation)

日本産クサギ属植物の倍数性進化に関する一考察/Ploidy evolution of Clerodendrum in Japan: interim results

*水澤玲子(福大・人文),兼子伸吾(福大・理工),國府方吾郎(科博・植物園),井鷺裕司(京大・農)

シマクサギ(Clerodendrum izuinsulare)は伊豆諸島に分布するクサギ属の固有種である.近縁種のクサギ(C. trichotomum)は東アジアに広く分布する亜高木で,日本では3変種が知られている.北海道から九州にかけてはクサギ(C. trichotomum var. trichotomum)が,九州から南西諸島にかけてはショウロクサギ(var. esculentum)が,屋久島以南にはアマクサギ(var. fargesii)が自生する.広義クサギには異数倍数性があるとされており,日本産クサギでは2n=46と2n=92,中国産クサギでは2n=52,アマクサギでは2n=24といった数が報告されている.ショウロクサギの染色体数は不明である.

シマクサギの染色体数は不明だが,マイクロサテライトマーカーのピークパターンからは,シマクサギが2倍体であるのに対して日本産クサギが4倍体であることが示唆されている.しかし,葉緑体DNAを用いた系統解析の結果からは,2倍体と思われるシマクサギが4倍体と思われる日本産クサギの系統に含まれ,2倍体とされる中国産クサギや,より低次倍数体であるはずのアマクサギはシマクサギの直接的な祖先ではないことが示唆されている.

本研究では,日本における広義クサギの倍数性進化の過程を明らかにするために,シマクサギ,クサギ,アマクサギ,およびショウロクサギについて,マイクロサテライトマーカー6座を用いたピークパターンの解析をおこなった.また,シマクサギ,クサギ,およびアマクサギについては,押しつぶし法による染色体の観察もおこなったので報告する.


日本生態学会