| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-004 (Poster presentation)

環境DNAの正体を探る:挙動の分析と観察によるアプローチ

*橋爪裕宜(神戸大院・人間発達環境), 源利文(神戸大院・人間発達環境)

環境DNAとは、動物の表皮や排泄物に由来する生体外に放出されるDNAと言われている。環境DNA分析手法は生物が残した痕跡をたどる、生態系調査の新たな手法として研究が進んでいる。いくつかの研究で環境DNAの正体は生物由来の細胞や細胞小器官ではないかと示唆されているが、まだ証明はされておらず、水環境中でどのように移動していくかについても検証されていない。

本研究ではコイ科カワバタモロコ(Hemigrammocypris rasborella)を用いて環境DNAの拡散の様子を調べた。4mのパイプの端でカワバタモロコ3匹を飼育する水槽実験で1mごとにつけた金属コックから水を回収し、定量PCRにより環境 DNAのコピー数を測定した。結果、時間が経つにつれて環境DNAは拡散し4mにまで達すること、DNA量は本体から1~2mの範囲に影響が大きいこと、放出量は個体差が大きいことなどがわかった。

また、水槽実験水の顕微鏡観察により魚由来の細胞を確認(酢酸カーミン染色およびDAPI染色)できたため、細胞を1つずつピペットで取り出し、single-cell PCRを行った。細胞ありと細胞なしサンプル(細胞を含まない水槽水サンプル)をPCRにかけ、細胞を含んだサンプルの一部にのみDNA増幅が見られたため環境DNAの正体の一つが細胞(片)であることを確認することができた。

これらの研究により自然環境中での環境DNAの状態を解明し、さらなる生態学調査への応用に役立てたい。


日本生態学会