| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-019 (Poster presentation)

水田におけるただの虫の多様性とアシナガグモ類の個体数―農法と森林の影響―

*筒井優(東大・農),馬場友希(農環研),田中幸一(農環研),宮下直(東 大・農)

農業の集約化は、水田環境に生息する多くの生物種の種数、個体数を減少させている。こうした背景を受け、減農薬栽培をはじめとした環境保全型農業が実施されている。こうした栽培方法は、環境に配慮している一方で害虫被害が増加し、慣行と比べて生産量が低下しているという問題点がある。そのため、害虫の天敵個体数を高い状態で維持する仕組みを明らかにし、生産量の損失を最小限に食い止めることが必要である。水田で優占する害虫の天敵としてクモ類が知られている。ジェネラリスト捕食者であるクモ類は、害虫以外の“ただのむし”を捕食することが個体数の増加および維持に重要だとされている。クモ類のなかでも個体数が多く、農地の生物多様性の指標種として優れているアシナガグモ類は、水田から発生する多様なハエ目を主な餌としている。ハエ目は種によって環境への応答が異なり、さらに発生消長が異なることが知られているため、種多様性の高い水田では、アシナガグモ類に季節を通して安定した餌資源の利用を可能にすると考えらえる。本研究では、環境保全型農業と周囲の森林率がハエ目の個体数と種数に及ぼす影響を明らかにし、種多様性が高い水田で餌昆虫の個体数の変動が小さく、アシナガグモ類の個体数を増加させるという仮説を検証する。

調査は、栃木県塩谷町における減農薬栽培と慣行栽培の水田で6月と7月、8月に行った。各水田でスイーピングを実施し、アシナガグモ類とハエ目を採取した。ハエ目は短角亜目と長角亜目で分け、長角亜目は科まで分類し、特の個体数の多いユスリカは、形態の違いと生殖器の形状で複数のグループに分類した。これらの調査をもとに、ハエ目の多様性がアシナガグモ類の個体数の増加および維持に及ぼす影響を議論する。


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