| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-040 (Poster presentation)

なぜ水田で複数種のコミズムシ類は共存できるのか?―「温度-サイズ則」の実証と近縁種間の体サイズ差が持つ意味

*藤井暢之(滋賀県大・環境科学),中西康介(名大・環境),西田隆義(滋賀県大・環境科学)

コミズムシ類(Sigara属)は国内で11種確認されており,体長は4 mmから7 mmと種によって様々である.一般的に近縁種は共存が難しいとされるが,複数種のコミズムシ類が生息する水田も存在する.そこで,近縁種間の共存を可能にする要因として種間の体サイズ差に着目し,水田のコミズムシ類の季節的消長と体長を調査した.滋賀県彦根市と高島市の各1筆の水田を調査地とした. 2013年4月12日から8月29日までの期間に,約2週に1回の頻度ですくい取り調査を,各水田で20回行った.採集したコミズムシ類のうち成虫は固定後同定・計数し,体長を測定した.幼虫は計数のみ行った.彦根市ではコミズムシS. substriata,エサキコミズムシ(エサキ)S. septemlineata,アサヒナコミズムシS. maikoensisの計4699個体,高島市では,コミズムシ,エサキ,ハラグロコミズムシ(ハラグロ)S. nigroventralis,ヒメコミズムシS. matsumuraiの計306個体が採集された.体長は春から夏にかけて小型化し,各種の体長と幼虫期の水温との間に,有意な負の相関関係が認められた.そのため野外のコミズムシ類でも,「温度-サイズ則」が成り立つことが実証された.季節により各種の体長は大きく変化したが,コミズムシの体長はエサキの約1.2倍で維持されていた.近年,近縁種間の負の相互作用として繁殖干渉が注目されている.体長差はこの繁殖干渉を緩和する可能性があり,その結果,彦根市においてこの2種は高密度で共存できたのかもしれない.高島市でハラグロが低密度だったのは,体長差が小さいエサキが同居したためかもしれない.複数種のコミズムシ類の共存は,種間の体長差によって成り立っている可能性が示唆された.


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