| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-074 (Poster presentation)

平成26年豪雪による山梨県ニホンジカ個体群への影響評価

*石塚直道(千葉大・園),飯島勇人(山梨県森林研)

ニホンジカの個体数が多い山梨県において、2014年2月期の大雪がニホンジカの個体密度に与えた影響を調査した。ニホンジカは積雪深が50cmを超えると行動不能となることが知られ、大雪の際に越冬地へ移動した個体群が過密になり、食料不足で大量の餓死個体が出現することがある。山梨県では大雪のため大量死が引き起こされニホンジカの個体密度が大きく減少した可能性が示唆された。調査対象地は甲府盆地に近くニホンジカの個体密度が増加し続けている山梨県北東部の山地を設定した。調査は糞塊法によって行い、過去のデータと比較することで積雪前後での個体密度の変動を調べた。調査の結果、ニホンジカの個体密度は前年比で最高35%減少したと考えられたが変わらず増加傾向にあった。前々年の糞塊密度が急激な増加を示したため今年度の個体密度減少率が過大に見積もられた可能性があることや、過去の大量死事例の死亡率を今回の個体密度減少率が大きく下回ったことから、大雪によるニホンジカの大量死は起こらなかったと考えられた。しかし、今回の豪雪による積雪深はニホンジカの行動を阻害する規模であったため、原因を考察した。山梨県内で観測された積雪深と最高気温の日変化の分析から、大量死が起こらなかった原因は、ニホンジカが越冬していた低地付近では温暖な気候のため雪が早急に融解し、短期間でにニホンジカが行動可能となったことだと考えられた。日本において大雪によるニホンジカの大量死が報告されているのは東北地方の金華山島など冬季の気候が寒冷な地域の事例のみであること、及び今回の山梨県の事例から、大雪による大量死が引き起こされるのは平年の積雪がある寒冷地での大雪時のみで、温暖な寡雪地域での大雪時は大量死は起こらないと考えられた。


日本生態学会