| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-161 (Poster presentation)

ダムとオショロコマの頭部形態の関係性

*斎藤壮央(徳島大院・先端技術),竹川有哉(徳島大院・先端技術),河口洋一(徳島大院・STS)

河川性サケ科魚類のイワナ属では、生息環境の違いが頭部形態の変異を引き起こすことが報告されている。例えば、北極イワナでは餌資源の利用の違いによって頭部形態が異なり、イワナでは他種との競争において採餌方法が変化したことによって頭部形態が変化することが知られている。

世界自然遺産に選ばれた知床半島には300基以上の砂防・治山ダムが存在しており、その影響として瀬淵構造の変化や河畔林の消失が報告されている。ダムによる環境の変化は餌資源の質・量やオショロコマの採餌様式に影響を与える可能性があり、それにより頭部形態が変化すると考えられる。本研究ではダムによる瀬淵構造・餌資源の質・量の変化がオショロコマの頭部形態に与える影響を明らかにすることを目的とした。

知床半島においてダムがある川とない川を3河川ずつ選び、各河川に50~100mの調査区を設置し、エレクトリカルショッカーを用いて魚類の採捕を行った。採捕したオショロコマは麻酔をかけて現場で頭部形態をスキャンし、その後冷凍保存して研究室に持ち帰った。各個体から胃内容物を取り出し、属レベルまで分類した後、個体数と湿重量を計測した。また、各調査区間で底生動物・流下物を採取した。

ダムがオショロコマの頭部形態に与える影響を明らかにするため、頭部形態を目的変数、胃内容物内の餌生物を流下・非流下に分類し、それらの個体数や割合とダムの有無を説明変数として一般化線形モデルによる解析を行った。その結果、ダムのある川のほうが上顎の長い個体が多い傾向があったが、餌生物の個体数や割合による影響は見られなかった。これらの結果に加え、底生動物や流下物の組成の違いとの関係性について考察していく。


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