| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-169 (Poster presentation)

ミャンマーMoe Swe保護林における住民による林産物の利用と森林荒廃

*三浦麻由子, 上田健太, 堀金司, 奥田敏統, 山田俊弘(広島大・総合科学)

ミャンマーは近年、急速な農地拡大による森林減少が進む一方で、残存林や木材資源確保のための保護林でさえも林産物資源の収奪的利用による荒廃が深刻化している。とはいえ、林産物は住民にとって日常的な生活物資であることから、単純な「止め山」的な施策は功を奏さない。すなわち住民の林産物利用を「ある程度」許容しつつ、森林荒廃を防ぐ対策を考えねばならない。

その第一歩としてまず、本研究では現在の森林の状況と住民による森林の利用状況を明らかにすることを目的に、ミャンマー中央部のMoe Swe保護林及び周辺地域を対象として①植物社会学的方法による植生調査と②林産物利用についてのヒアリング調査を行った。

植生調査プロットの種組成とそれを特徴づける環境要因との関係を調べるために、正準対応分析を行った。環境要因には、林冠被覆率(%)、最大樹高(m)、両者の値から算出した森林荒廃の程度(%)、主要道路からの距離(m)を用いた。

その結果、道路からの距離が遠いほど森林荒廃が進む傾向が見られた。これは、森林の奥ほど保護林の管理が届かず、住民による林産物利用が多くなるためと考えられる。

ヒアリング調査の結果、計72種が建材、薪炭材、食料などとして住民に利用されいることがわかった。また、建材樹種の優占度が低い場所ほど荒廃の程度が高かった。このことから、住民による建材樹種の伐採は森林荒廃、ひいては建材資源の減少につながることがわかる。よって、今後の持続可能な建材利用のために、①住民による建材樹種伐採後の植林活動の推奨・支援、②森林奥地での建材の違法伐採防止施策-等の必要性が指摘できる。

その一方で、薪炭材・食料利用種は森林荒廃とは関係なく分布しており、上述の施策を行ったとしても住民の薪炭材・食料の利用の便益は今後も確保できると考えられる。


日本生態学会