| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-179 (Poster presentation)

外来および在来肉食魚の捕食行動からみる在来魚の衰退~呑み込み方向の観点から~

*平藪直樹,西田隆義(滋賀県立大・環境)

日本の多くの水域で、オオクチバスによる在来魚の駆逐が起こっている。一方、ブルーギルはオオクチバスと同じ水域に安定的に共存している。しかし、オオクチバスがなぜブルーギルよりも在来魚を効率的に捕食できるのかについてはほとんど分かっていない。この講演では、オオクチバスと在来の肉食魚であるハスで、被食魚の形態と呑みこみ方向の違いを比較し、在来魚がなぜ衰退したのかを考察する。

魚食性肉食魚をはじめとする丸呑み型捕食者(gape-limited predators)では被食魚を頭から呑みこむのが原則であり、その理由は、尾から呑みこむと鰭や鱗などが逆立つために呑み込みにくいからと推定される。胃内容物調査より、ハスは在来魚のみを捕食し、頭から魚を呑みこんでいた。しかし、オオクチバスは、在来魚を頭尾方向に関係なく呑み込んでおり、これに対してブルーギルは頭から呑みこんでいた(p<<0.05)。

オオクチバスの口腔部を用い,ブルーギルの呑み込みに必要な嚥下力の測定を行った。尾方向から呑み込むと、ブルーギルの鰭が引っかかってしまい、呑みこむことが出来なかった。頭方向から呑み込んだ場合について、オオクチバスの口径とブルーギルの有効体高の関係をロジスティック回帰した。その結果、口径に対して有効体高が60.6%であるとき、呑みこみ成功が50%であると推定された。この結果は胃内容物調査の結果を支持するものとなった。

以上の結果より、オオクチバスは、ブルーギルに対して後方から捕食を試みても、成功する確率は低く、呑み込みは前方からに限定される。これに対して、在来魚はその紡錘形の体型から、後ろからも呑み込まれてしまう可能性が高い。すなわち、在来魚の被食リスクは倍増する可能性がある。この違いが、在来魚の被食率を高める結果となり、在来魚の駆逐に至ったものと推定できた。


日本生態学会