| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-181 (Poster presentation)

土壌動物においてCaイオンとMgイオンがカドミウムによる毒性と重金属応答遺伝子の発現に及ぼす影響

*大瀧達郎(横国大・環), 中野将和(横国大・理工), Li-Bo Hou(横国大・環), 金子信博(横国大・環), 中森泰三(横国大・環)

重金属の生態リスク評価手法のひとつとして,Biotic ligand model(BLM)に現在期待が寄せられている.BLMは,陽イオン濃度から重金属の毒性を予測するモデルで,可吸態である重金属イオンは他の陽イオンとの競合により体内に吸収される量が変動すると想定している.しかし,土壌動物に関してはBLMの開発は遅れており,開発のためにはどの陽イオンが重金属の毒性に影響するか特定していかなければならない.本研究では土壌動物のFolsomia candida(トビムシ)とEisenia andrei(ミミズ)を試験動物とし,CaイオンとMgイオンのカドミウム毒性への影響を調べた.まず,Caイオン,Mgイオン,Naイオン,Kイオンを超純水に添加し,pHを6.0に調整した.そのうちCaイオンとMgイオンについては段階的に異なる濃度に調整し,これを人工溶液とした.その後その人工溶液に塩化カドミウムを段階的に異なる濃度になるよう添加し,試験動物をそれぞれ投入した.そして,Caイオン濃度あるいはMgイオン濃度の異なる人工溶液でカドミウムの半数致死濃度(LC50)を求めた.その結果,F. candidaでは,Caイオン濃度が高くなるほど,カドミウムのLC50に有意な上昇が見られた.一方,Mgイオン濃度とカドミウムのLC50間では有意な関係が見られなかった.E. andreiでは,CaイオンとMgイオンのどちらにおいてもカドミウムのLC50と有意な関係は見られなかった.これらの結果から,F. candidaではCaイオンがカドミウムのBLM開発に必要であることが示された.E. andreiでは,CaイオンとMgイオンはカドミウムのBLMに必要がないと考えられた.


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