| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-192 (Poster presentation)

野付風蓮道立自然公園における鳥類相の変遷

*佐藤瑞奈(酪農大院・野生動物管理),石下亜衣紗(別海観光開発公社),吉田剛司(酪農大・環境共生)

野付風蓮道立自然公園は北海道東部に位置し、日本国内有数の野鳥のサンクチュアリであり、多くの水鳥が飛来することからラムサール条約登録湿地に指定されている。しかし、夏鳥に関しての調査は,2002年・2003年以来実施されていない。

そこで本研究では、野付風蓮道立自然公園の夏期における鳥類の生息状況を明らかにする。

調査手法は過去の調査と同様ラインセンサスとした。調査コースはポンニタイコース0.5km、一本松‐野付崎コース3.7km、走古丹コース3kmである。

調査の結果、走古丹コース21種、ポンニタイコース11種、一本松‐野付崎コース17種を確認した。過去の調査結果と比較したところ発見種数は減少傾向にあった。しかし、調査時以外で確認された種もあり、完全に確認できなかった種はポンニタイコース、一本松‐野付崎コースでシマアオジ(Emberiza aureola)、3コース共通でマキノセンニュウ(Locustella lanceolata)のみである。また、発見種数に大きな差がなかったものの発見個体数は全体的に減少傾向にあった。

野付風蓮道立自然公園では近年エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の増加による食害や海面上昇による塩害等が発生しており植生構造の改変が起きている。特にエゾシカの増加は深刻であり、走古丹地区では2014年3月に実施した個体数調査で約2,080頭を確認した。また、植生調査により下層植生の衰退や樹木の枯死も発生していることが分かっている。夏期の鳥類の発見個体数の減少も、植生構造の改変が要因ではないかと推測されるが、シマアオジやマキノセンニュウは全国的に個体数が減少傾向にあると報告されているため、今後は追跡調査と詳しい植生調査を実施して、鳥類の生息環境の状況とエゾシカの影響も把握する必要があると考える。


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